第7回APEC閣僚会議 開会の辞

平成7年11月16日
副総理(兼)通商産業大臣
橋本龍太郎


代表の皆様、紳士・淑女の皆様

 第7回APEC閣僚会議にようこそお集まり下さいました。 ここ大阪は、交易の街として成長し、歴史的に自由な気風がみなぎるという点で、これから2日間の我々の議論にまことにふさわしい環境を提供してくれるものと考えます。 本年初めの震災による被害を乗り越え、このように準備を整えてくださった地元の自治体、産業界の方々の御努力には心から敬意を表したいと思います。

 言うまでもなく、今日ここに集まった我々は、地域協力の歴史に新たなページを開こうとしております。 アジア太平洋地域に属する我々の文化、歴史は実に様々であります。 もともとアジア太平洋という地域概念は、APECの創設によって人々に広く定着したものであり、比較的歴史の新しいものであると言うことができましょう。 これは、他の地域フォーラムと異なるAPECのユニークな特徴です

短い期間にアジア太平洋という概念が急速に定着した背景にあるものは、域内の活発な貿易投資という形での相互依存関係の深化でありましょう ・・・・参加メンバーの貿易に占める域内取引の割合は、71%と高い水準にあり、EUの55%を大きく上回ります。成長する市場を次々に生み出し、高い成長率を維持しつつ、アジア太平洋という地域が、モノ、サービス、人の移動を原動力として、急速に一体感を深めつつあります。

 ・・・・の創設から7年を経た今年は、国連が創設されてから、そして第二次世界対戦が終了してから50年目に当たります。 今や冷戦は終わり、私たちは世界全体としては、より平和な状態を享受しています。

このような中で、世界の貿易体制は、今年、WTOの発足という大きな意義を持つステップを 踏み出しました。ウルグアイ・ラウンドの交渉に費やされた約7年という期間は、自由な貿易、投資、サービスというものを達成することは決して易しいことではないことを物語っております。 それだけに、・・・・というフォーラムに集う我々は、世界に、新しい協力のあり方を発信しWTOの設立に結実した、貿易、投資の拡大へのエネルギーを一層強固に定着させる必要があります。 GNPで世界の48%、貿易額で46%を占める我々の役割は、大変大きなものであることは言うまでもありません。

 ここで、我々に共通する一つの決意を協調したいと思います。 それは自己改革への決意であります。 ここに集まるメンバーには、これまでに大胆な規制の緩和、関税の引き下げといった改革に取り組まれ、その成果をダイナミックな経済成長という形で享受しておられるところが多く含まれます。 それは、決して外部から強制された改革ではなく、内発的なエネルギーによって推進されたものです。私は、これこそが、アジア太平洋地域のダイナミズムの源泉であり、世界に誇れる実績であると考えます。

 今や、モノ、資本、人材は、国境を超え、より良い環境を求めて自由に動きます。 各エコノミーは、それぞれの魅力を競い合う、一種のマーケットメカニズムの中に置かれていると言うことができるでありましょう。

 アジア太平洋地域のこれからの強力においては、参加メンバーが共に取り組む行動とともに、こうした改革への内発的なエネルギーを有効に具体的な成果に結び付けるフレームワークを作ることが重要であると考えます。 このような取り組みは、ユニークなものであり、我々は、これに大きな成果を期待できる好条件に恵まれていると考えられます。

 あわせて、域内の均衡ある発展は、域内メンバー共通の課題であり、これを実現するための経済・技術協力は 、・・・・の重要な任務の一つであります。 それぞれの協力分野での活動は、情報交換、政策対話等を通じた各メンバーの政策の一層の充実をもたらすという成果が期待されます。

APECは、創立以来、漸進的に協力の体制作りを進め、昨年、インドネシアのリーダーシップの下に、「ボゴール宣言」という、将来に向けた目標・ビジョンを設定することができました。 そして今後、我々は、目標・ビジョンの達成に向けた「行動」という新たな段階に入ります。

 今回の閣僚会議は、その第1歩を踏み出す機会であり、APECの将来を方向付ける極めて重要な役割を坦うものです。 その具体的な成果となるべきものは、行動指針案のとりまとめであります。

その作業に向けて、本年、各分野の大臣会合、高級事務レベル会合、2つの委員会、10のワーキング・グループ、専門家会合、政策アド・ホック・グループといった様々なフォーラムが実に活発に取り組まれました。 私が今西事務局長から伺ったところでは、過去1年間に開催されたAPEC会合は約150回に及ぶとのことです。 APEC全体が一つの目標に向かって、これほど協調のとれた形で活動したというのは、APECの歴史の中で初めてのことであったと思います。 各フォーラムの活動にイニシアテイブを発揮されたメンバーに改めて敬意を表したいと思います。

 さらに、我々は、賢人会合と、パシフィックビジネスフォーラムという二つの提言機関からも極めて有意義な貢献を得ることができました。 これからの活動に参加された方々に感謝したいと思います。

 以上の活動に支えられて、我々は今、APECの将来を議論しようとしております。 この2日間の会議が、アジア太平洋地域の将来に実り多い成果をもたらすことを心から祈念いたします。

 御静聴ありがとうございました。




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