企業が独自に現地スタッフを日本に招き、研修を行うケースも増えている。大 阪府の家電用プラスチック成型加工メーカーは、タイの工場から将来の幹部候 補生を毎年10人前後、本社工場に招き、日本人の生活様式から製品の品質管理 に至るまで日本式経営方式のすべてを教えている。
アジア諸国に対する、関西の企業進出状況は、大手企業では、家電メーカー数 社がタイ、マレーシア、シンガポールなど約40か所でテレビ、ビデオ、エアコ ンなどの製造、販売から部品生産までを手がけており、日本での国内生産量を 凌駕している商品も多く、日本への逆輸入も加速度をまして増加し続けている。 薬品メーカーなども台湾、タイ、香港、フィリピン、インドネシア等に医薬品 を製造、販売する合弁会社を設立している。食品メーカー数社は、香港、シン ガポールなどを拠点に、即席めん、冷凍食品など生産、現地人の嗜好に合わせ た製品造りのため、きめ細かいマーケティングを行っている。
ある関西の小規模な電機部品メーカーは、1987年にマレーシアに進出し、現地 の人達と共に辛酸を重ね、経営努力につとめた結果、いまでは日本メーカーは もとより、世界の大手電機メーカーにフロッピーディスクなどを納入する優良 企業にまで成長した。
また大阪のインテリアメーカーは、韓国、台湾の会社と技術提携して合弁会社 を設立し、シートや内装材を現地自動車メーカーに納入している。タオル卸売 業者は、シンガポールの国際卸売マート内に日本から本社を移転し、アジアを 統括する現地法人を設立し、ベトナムで委託生産を開始した。パキスタン、イ ンド、中国から原材料を調達し、いまではアジアを軸に多国籍企業として活躍 を続けている。これまでアジアに未進出の関西の中小企業の多くも、アジア志 向は強まる一方で、経済団体が1994年にまとめた海外進出動向調査によると、 既に中小企業の4割近い企業が何らかの形で海外進出に関与しており、その関 係する進出先の約9割はアジアだった。
このように、関西とアジアとの交易は拡大し、最近の大阪税関の地域別通関実 績では、アジアが輸出入とも北米を抜いて一位となった。関西人の気取らない 人柄や、効率的な経営手法はアジア各地に受け入れられ、空港や商取引の場で も関西弁がしばしば語られるようになっている。