飲食業

日本の料理の真髄は、大阪で育まれた上方料理である。淡白な味つけが特徴で、 日本人の味覚の基準となっている。
海に面している大阪では、全国の物資が集まる流通の拠点として、新鮮な魚が 入り、素材を生かした料理が作られた。着物でぜいたくをする京都の「着倒れ」 に対して、大阪は「食い倒れ」の町という言い方が現在も残っている。したが って関西には、わが国屈指といわれる高級日本料理店が数多くあり、大阪の 「吉兆」、「大和屋」、京都の「つる家」などでは芸術の域にまで高められた 日本料理の真髄が味わえる。
外国料理も多彩で、中華料理とフランス料理などの西洋料理は和食と並んで好 まれ、高級店から庶民的な店まで幅広く存在する。
韓国料理やイタリア料理店も多く、韓国スタイルの焼き肉料理、スパゲッティ やピザなどの専門店もある。また近年は、エスニック料理と呼ばれる世界各地 のローカルな料理がブームになり、東南アジアや北アフリカ、南米などの料理 を出すレストランが増加している。庶民的な食べ物としては、麺類では関西風 のうどん、そして関西独自の味として、たこ焼、お好み焼などがある。
このような多彩な食文化を支える料理専門学校も多数あり、多くの場合「和・ 洋・中」の3部門を教えている。大阪阿倍野の辻調理師専門学校は、わが国最 大手の学校で、料理に文化を持ち込んだとされて評価が高く、東京および本場 のフランスにも学校を開設している。
また、成長著しい外資系外食チェーンは、市場細分化戦略として、まず地域を 限定してパイロット・ショップを設置し、それに基づく消費者情報をデータ化 し、その後全国的にチェーン展開する例が多い。外資系外食チェーンの多くが 関西地域に一号店を設けるのは、この地が日本人の「食文化」の中核地域であ ることを外資系企業が認識しているからと思われる。
市場が成熟した近年は、和風ファーストフードや、持ち帰り弁当では低価格化 の流れがある反面、高級店ではグルメ指向が強まり高価でも内容に満足のいく ものへと、消費者は分化していく傾向がみられる。