北部のなだらかな高原と南部の険しい山地の間に、京都、奈良の盆地と大阪 平野を中心とする中央低地が広がっている。中央低地にはわが国最大の淡水 湖・琵琶湖があり、そこから流れ出る川が大阪湾に注いでいる。大阪湾をは さんで西に淡路島、島の北側の対岸が東経135度の子午線の街、兵庫県明石市 へとつながり、進行中の明石海峡大橋の工事が完成すれば本州と四国の徳島 県が陸路で結ばれる。
中央低地の西部は穏やかな海洋性気候だが、京都など内陸部は寒暖の差が大 きく、南部の山地では年間降水量が4,000mmを超える所もある。
関西の地勢はこのように変化に富んでおり、したがって四季折々の自然の変 化も日本の中で、最も顕著にあらわれる地域といえる。大陸から近く、日本 海、瀬戸内海、太平洋にも接しているため水陸とも交通の便に恵まれて、 地勢的には日本の中でも絶好のポジションに位置しているのが関西の大きな特 徴である。
このため、関西は古くからわが国の経済・文化の中心地として栄え、商業都 市・大阪、港湾都市・神戸、歴史都市の京都、奈良など、未来と伝統を融合 したユニークな地域を構成しており、琵琶湖を中心とした滋賀、日本海に面 した福井、太平洋に面した和歌山などがこの地方を形成している。本書では 隣接する三重や、大阪湾をまたいで経済・社会的に密接な関係のある徳島も、 関西の中に包括して紹介する。
関西の交通網は充実している。各都市間の連絡は、高度に発達した鉄道網や、 高速自動車道路などの各種の交通手段で密接に結ばれている。
航空路も国内線は、従来からの大阪国際空港から全国主要都市に放射線状に 伸びている。海外へは、関西国際空港から27カ国、50都市へ、週438便飛 んでおり、今後も増便が続く見込みで、関西は「世界に開かれた国際ゾーン」 としてさらに飛躍が期待されている。
瀬戸内海を内に抱いている関西は、日夜海上交通が頻繁に行われ、海上アク セスも充実している。大阪、神戸の二大港、日本海側の敦賀、舞鶴、福井 港等を中心に国内および中国、韓国などアジア各地と結ぶ航路が発達し、関 西における交通のもうひとつの大動脈となっている。
関西の2府7県にまたがる関西の総人口は約2,400万人で、大阪、京都、神戸 の三市とその周辺には千里、泉北、京阪奈、西神、三田等のニュータウンが生 まれており、それぞれが連なって巨大な都市群を形成し、市街化された地域に は約1,600万人が住んでいる。
関西経済圏は首都経済圏に次ぐ規模をもっており、明治以後、繊維、造船、化 学、電機、鉄鋼、石油などの産業が次々に成長し、我が国の経済発展に大きく 寄与してきた。現在ではバイオ産業、エレクトロニクス、メカトロニクス、フ ァインセラミックス等、先端産業分野で、わが国の中でも最先進地域として位 置づけられ、多くの製品は世界的なブランドとして世界中の人々に愛用されて いる。